「企画は一文で説明すべし」、でも一文では説明できない企画もある
本屋で面白い本を見つけて、買って一気に読んでしまった。
松本修著「探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子」(ポプラ社)
関西に住む人なら、知らない人はいないといっても過言ではないであろう人気番組「探偵!ナイトスクープ」を作った朝日放送の松本修さんが書かれた、番組誕生時から現在までを書き記した本である。
古くからのナイトスクープ視聴者にとっては、番組が生まれる過程、出演者が決まっていく様、過去の爆笑ネタが生まれていく背景(取材ディレクターのコメントあり)など、読みどころ満載の本であり、まずは手にとって読んでいただきたい本である。
ブログの記事にしたい内容はたくさんある。例えば、最近目に付く番組の演出におけるテロップの使い方の先駆者はナイトスクープである(しゃべっている内容をわざわざテロップ表示したり、テロップを使って出演者に突っ込みを入れるなど)。
また、取り上げた取材先・ネタについても、全国区のニュースやバラエティで取り上げられるもっと前にナイトスクープが取り上げていたものがたくさんある(赤ちゃんが泣き止む「竹本ピアノのCM」とか、鮮魚コーナーで流れていた「お魚天国」とか、増築を重ねる「軍艦マンション」とか)。
これらのことについては、また別の機会に記事に出来ればと思っている。
で、今日取り上げるのは、記事のタイトルに使ったこの言葉である。
「企画は一文で説明すべし」
これは、松本さんが書き上げたナイトスクープの企画書(当初は別の仮タイトルがつけられていた)を見て、当時の制作局長である山内久司さんが、松本さんに言われた言葉から来たものである。その部分を引用してみる。
「企画案を呼んだだけで、この番組が目に見えてくる。番組の内容を、たった一行で表現してるやろ。これがいちばん大事なんや。テレビ番組というのは、一行で説明できるもんしかヒットせーへんのや」
「一行とは、短い一文、ということや。説明するのにややこしい番組は、かならず潰れる。一口で説明できんものは、テレビではあかんのや。しかしこの企画は、きわめて簡明でわかりやすく、面白い。松本君、この番組は、間違いなく大ヒットするでぇ!」
(引用ここまで)
山内さんといえば、「必殺仕掛人」などの大ヒット番組を生み出したプロデューサーである。その山内さんが、ナイトスクープの企画書の最初の部分を読んで言われた言葉なのである。
その企画書の最初の部分、実はナイトスクープの視聴者は毎週その文章を見ているのである。
円広志さんの「ハートスランプ・ひとりぼっち」が流れる中、下から文字がスクロールされてくる。
「この番組は、視聴者から寄せられた依頼に基いて“上岡探偵局長”が部下の探偵たちを野に放ち、公序良俗・安寧秩序を守るべく、この世のあらゆる事どもを徹底的に調査探求する娯楽番組である。」
探偵局長の交代や、ディレクターの判断等で一部変更はされているが、現在に至るまで番組オープニングで流れているこの言葉こそが、企画書の最初の部分に書かれていたのである(正確に言うと、企画書冒頭の一文を番組オープニング用にアレンジしてある)。
確かに、ナイトスクープという番組がどういう番組なのか、番組を知らない人が読んでもすぐに理解できる。
テレビ番組に限らず、すべての「企画」と呼ばれるものは、こうあるべきなのだろう。
と、ここまで書いてからふと思った。「水曜どうでしょう」は、全く逆の企画だなあと。
番組の企画内容を「一文」でなど、説明できない。「出演者二人とディレクター二人が、全国・世界を旅します」といったところで、この番組のすべてを言い表してはいない。
でも、番組は面白く、全国にその人気が波及している。「ナイトスクープ」とは、全く違う番組制作アプローチで作られた、特異な番組だといえる。
そのどちらの番組も、比較的視聴しやすい時間帯で見られることは、よく考えれば幸運である。
最近は、ナイトスクープもすっかり見なくなってしまっていたが、久しぶりに見てみようと思う。また何か新しい発見があるかもしれない。
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コメント
非常にその本に興味がそそられております。
以前に「アホ・バカ分布考」の方は購入済でして、地域性、使い方など楽しく読んだ記憶があります。
私もたまにしか見なくなってしまいましたが、
この間久々に見た企画がものすごく面白く真夜中に大爆笑しました(笑)
実家で現在「クラシック」を放送してくれている局ではこの番組も系列局ではないにも関わらず10年以上前から数週遅れで放送してくれております。
どちらも魅力ある番組。大好きな番組です。
投稿: Riezo | 2005.05.06 21:31
Riezo様
私も「アホバカ」は持っています、ハードカバー版ですが。あちらにもナイトスクープの誕生についてちょっと触れていたりしますね。
この番組は「当たり外れ」が大きいので、外れたときは「見て損した!」と思うのですが、当たったときは、思い出し笑いで眠れないほど笑ってしまうこともありますよね。
この本には、そういったVTRの出来不出来のことについても触れられていたりしますよ。
関東では、テレビ朝日での放送をやめて、関東U局での放送をするようにしたそうです。これから関東でも見やすい時間帯にナイトスクープが見られるそうなので、ますます人気番組になるでしょうね。そして、番組の名作集DVDも順次発売されるそうです。
こうなると、「どうでしょう」さんとDVD売り上げ争い、なんてことになるかもしれませんね。
投稿: K_S | 2005.05.06 23:12