『「最長片道切符の旅」取材ノート』を読み始める
冒頭には、宮脇の娘で作家の宮脇灯子さんによる「まえがき」がある。それによると、灯子さんが旅行中にメモをたくさん取るかたずねたところ、彼は「覚え切れないことや主観で書くことが許されない事実」は、読者から指摘されると大変なためメモを取るが、「とらなければ覚えていないようなことは、書くに値しないこと」といって、ほとんどとらないと答えたそうである。
しかし、彼の残した取材ノートは100冊もあり、そのうち「最長片道切符の旅」の取材ノートは11冊もあったという。これは、この「最長片道切符の旅」が、趣味としての旅ではなく、紀行作家・宮脇俊三として「書くための旅」の最初であったため、気合が入っていたからたくさんノートに書いたのだろうと、灯子さんは書いている。
実際、平成7年にヨーロッパに出かけた時のノートには、日付や時刻、座席番号などが箇条書きされているだけのものになっていたそうで、長年の経験から書くべきことと書く必要のないことを取捨選択されていったものと思われる。
そして、「取材メモ」の内容を読み進めていくと、日付や時刻、乗車した列車の乗車率、乗客の様子、車窓から見える風景、泊まった宿のこと、食事のことなど、かなり細かく記されていたことがわかる。読んでいると自分がそういう旅をしたような気分になってくる。
その一方で、「鉄」なら記録していそうな、車両の細かい編成や車両番号などはあまり記されていない。取材メモの中でも、そういった「鉄」と自分を一緒にしてほしくないような記述が見られる。そのあたりが、「鉄」以外の人にも読まれ、ベストセラーとなった大きな要因ではないかと思う。
いつもならあっという間に「読了」してしまうのだが、今回のこの「取材ノート」は、その内容の細かさに圧倒され、なかなか読み進むことができない。そして、読むと今度は「最長片道切符の旅」そのものが読みたくなってしまう。そこで、本棚から文庫本を探し出してみた。
カバーもなくなってしまい、かなり汚れも目立ってはいるが何とか見つけ出すことができた。
当分は、「取材ノート」と「文庫本」を行ったり来たりしながら、この「名著」を存分に楽しみたいと思う。
読み終わったらきっと他の宮脇作品を読みたくなるんだろうなあ・・・。
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