いろんなニュース記事で、被災した東北の鉄路がどうなっているかを見ているのだが、いい話と悪い話が混在している。
まずはいい方向の話から取り上げてみる。
東日本大震災:三陸鉄道復旧補助、事業者負担抜きで 知事、衆院委に要望 /岩手(毎日新聞)
ひたちなか海浜 鹿島臨海 復旧費、国が大半補助 被災鉄道支援へ新制度(茨城新聞)
この2つの記事はいずれも、復旧に関する費用について国と自治体が新たな制度で補助率をあげることで、事業者負担がほぼなくなる方向だというもの。まだ確定ということではないが、これが実現すれば、鉄道事業者にとってかなり助かるのは間違いない。
また、民間ベースでの支援ではこんなニュースも。
三陸鉄道支援へ、杉様マークがゆく オーナー第1号に(朝日新聞)
これは、三陸鉄道が年間30万円で募集していたヘッドマークオーナーに、杉良太郎さんの事務所が第1号に決まり、運転を開始しているとのこと。杉さんは、震災直後から自ら物資を持って被災地を支援してきており、今回のヘッドマークオーナーもその1つ。
これ以外にも阪急交通社やイオントップバリューなどの企業が手を挙げており、順番待ちが出るほどの人気とのこと。
一方で、よくない方向の記事も見受けられる。
JR大船渡線、揺れる存続 住民から不要論も 岩手(朝日新聞)
一関と盛を結ぶ大船渡線は、気仙沼と盛の間で大きな被害を受けており、復旧の方法にも様々な案が出る中、やはり復旧費用の負担が検討課題となっており、大船渡市の復興計画策定委員会では
「そもそも復旧させる必要があるのか」
「代替バスのほうが小回りが利く。費用は本当に必要な復興に回すべきだ」
といった主張も出てきているとのこと。
それから、東北新幹線の開業による乗客減に加えて、鉄道の赤字を補填していた別事業が震災の影響で減ったことにより廃止がほぼ決まった鉄道もある。
青森の十和田観光電鉄、廃線へ 新幹線開業で乗客減(朝日新聞)
三沢と十和田市を結ぶ十和田観光電鉄が、臨時取締役会を開き、廃線する方針を決めたとのこと。
会社は地元の自治体に支援を要請していたものの「経営改善が見込めない」と要請を拒否していたそうで、その回答を踏まえての決定だという。廃止したばあいは代替バスを走らせる考えとのこと。
地元の人に支える気がないのなら、廃線もやむなしなのかもしれないが、本当にそれでいいのだろうか?
鉄道路線を敷設するには相当のコストがかかっていて、一度なくしてしまえばそれを元に戻すにはとてつもない費用がかかる。
それに、代替バスがあるといっても、輸送力は圧倒的に小さく、雪などの天候による運行の安定度を考えれば、鉄道のほうが圧倒的に有利である。
自家用車があるから、という人もいるだろう。でも「今」運転できたとしても、この先歳を取ってからもずっと運転できるのだろうか?自分たちの子どもが、自分のために車を運転してくれる保証などどこにもないのに。
それと、地方鉄道のあり方を考えるときに、よく登場する2つの鉄道会社と比較して考えてみる。
1つは、和歌山電鉄。「たま駅長」でおなじみの鉄道だが、ここは地元住民が存続運動を続け、そこに両備グループが手を差し伸べた形で現在に至っている。
もう1つは、いすみ鉄道。ムーミン列車やキハ52の運行など、「鉄」やそれ以外の「観光客」を呼び込んで現在に至っている。
もちろん、立地条件が違いすぎるので単純に同じことをして同じ効果が出るかといえば、そうではないのはわかっているのだが、大船渡線も、十和田観光電鉄も、地元だけではなく、地元以外からどうやって来て乗ってもらうかを、考えてもよかったのではないかと思うのである。
地方鉄道で乗客を増やすアイディアは、上記2社以外でも、各地でたくさんの実践例がある。例えばこんな例も。
鉄道存続へ沿線住民うごく ツアーで魅力捜しも 石川(朝日新聞)
これは北陸鉄道が沿線の住民組織とともに、利用促進連絡会を作り、沿線の見所を改めて発掘して「ミニツアー」を実施して、さらに沿線住民にPRしていくとのこと。
ここに取り上げたもの以外でも鉄道を残すためのアイディアや実践例はたくさんある。その1つでも試してみようという気持ちにはならなかったのだろうか。今からでもまだ出来ることはあるはず。
まあ、こんなインターネットの片隅でいくら叫んでも届かないかもしれないが、鉄道、特に地方鉄道を応援するものとして、こうした記事は書き続けていきたいと思う。
もちろん、実際に乗りに行くことも大事だが(近々少しは乗りにいけそうだ!)。
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